2型糖尿病とは
糖尿病のなかで最も頻度の高い型です。遺伝的要因によるインスリン分泌低下と、生活習慣の乱れやストレス、肥満などの環境的要因によるインスリン抵抗性が主な原因です。これらが複雑に組み合わさることにより、相対的なインスリン不足に陥ることで発症します。一般的に糖尿病と呼ばれるのは、この2型糖尿病であることがほとんどです。国内では約1000万人の糖尿病が疑われているとされています。
2型糖尿病は、成人してから発症する人が多いほか、加齢に伴ってインスリンの分泌が減少するのが原因となります。日本国内ではどちらかというと男性に多いと言われています。特に、肥満傾向の方に多く発症しますが、肥満でなくてもインスリンの感受性が悪い方に発症しやすいとされ注意が必要です。
2型糖尿病の原因
2型糖尿病の原因は遺伝的素因と環境的素因に分かれています。遺伝的素因とは、主にインスリン分泌がしにくくなることです。環境的素因には、過食・不規則な食事・どか食い(一度にたくさんの食事をとる)・早食いといった食生活の乱れや、運動不足、シフト勤務や夜勤、ストレスなどの社会環境、肥満があります。もともとアジア人は、欧米人に比べて肥満度が低くても内臓脂肪型になりやすく、インスリン抵抗性が起こりやすいとされています。2型糖尿病は生活習慣病と言われていますが、インスリン分泌の低下はほぼ必発であり、生活習慣の乱れだけではなく、大なり小なり糖尿病になり易い体質(遺伝的素因)を持っているとも言うことができます。
2型糖尿病の症状
自覚症状がほとんどありませんが、高血糖が続くことで喉の渇き・多尿・多飲・体重減少などの症状が現れます。
治療方法
食事療法・運動療法・薬物療法の3つが糖尿病治療における基本となります。
食事療法
基本的に食べてはいけないものはありませんが、血糖値コントロールを行うために食事内容についてのアドバイスを行っております。栄養バランスを良く、患者様の病状に応じたエネルギー量を調節していきます。当院では、管理栄養士や糖尿病療養指導士による栄養相談を積極的に実施しております。
運動療法
患者さんの生活状況に合わせて、可能な限り推奨しています。筋トレや有酸素運動と聞くと、ハードルが高くなるかもしれませんが、普段の通勤通学時や自宅でもできる運動はたくさんあります。ハードな運動をする必要はありませんが、もともと運動習慣のある方は、しっかりとした運動をしながらコントロールできるように負荷カロリーを設定したり、メニューの相談も可能です。適度な運動を行うことで、糖を消費する・筋肉量を増やして糖吸収を促進させる・脂肪を減らしてインスリン作用を高めるなどの効果を得られます。患者様の年齢や症状・運動経験に応じて適切なメニューをご提案しております。
薬物療法(内服薬・GLP-1・インスリン注射)
食事療法や運動療法を行っても十分な改善が見られなかった場合に、薬物療法を行います。ただ、患者さんの膵臓の残存機能やインスリン抵抗性の状態によっては、膵臓の機能をそれ以上悪化させないため、お薬の併用をお勧めする場合があります。内服薬もただ血糖を下げる以外に様々なアプローチがありますので、状態に合わせて選択します。内服薬が適さない場合(血糖値や合併症、糖尿病の原因によってはインスリン療法が適切な事があります)にはインスリン療法などの注射による治療も行います。近年ではGLP-1受容体作動薬という種類の薬剤が、動脈硬化性心疾患のある方の第一選択役になりつつあります。インスリン療法では、自己注射に加えてインスリンポンプ療法も行っております。
よくある質問
2型糖尿病は遺伝しますか?
2型糖尿病は遺伝の因子があります。両親が2型糖尿病罹患者の場合、子供の約半数が糖尿病を発症するとされています。国内外のコホート研究で、年齢・性別・糖尿病の家族歴・BMIなどを用いると、2型糖尿病の罹患予測がかなり正確にできるという報告があります。さらに、ある特定の遺伝子に多型(遺伝子配列の個人差)があると2型糖尿病に罹患しやすくなることが報告されており、これを糖尿病感受性遺伝子多型と呼んでいます。この遺伝子多型は、日本人には数十個以上あり、それぞれの遺伝子多型によって糖尿病になりやすくなるリスクの程度も違っています。さらに遺伝子多型を複数持っていることもしばしばあり、たくさん持っていれば持っているほど糖尿病になり易くなると言われています。ただ、この点についてはまだ解明されていないことも多いのが現状です。この遺伝的要因に生活習慣の乱れなど環境要因が重なることで、さらに発症リスクが高まります。
2型糖尿病になりやすい人はどんな人ですか?
生活習慣が乱れている人・喫煙習慣がある人・運動不足・高血圧などの方は糖尿病の発症リスクが高いとされています。特に、食べ過ぎ・飲み過ぎ・生活リズム・間食・栄養バランスが崩れている・食事を抜くなどの習慣がある方は注意が必要です。その他、遺伝的要因も大きく影響しているとされています。
2型糖尿病を悪化させてしまう食べ物はなんですか?
2型糖尿病になった原因は個人個人で異なりますので、これを食べたら悪化する、というようなことはありません。ただ、人間には様々は栄養素が必要ですので、炭水化物やたんぱく質、脂質をバランスよく食べることは重要になります。現代では美味しく高脂質高カロリーな食事、お菓子がすぐ手に入りますので、適切な量にとどめる知識が必要です。ご飯を減らしてお菓子を食べる、食事を菓子パンで済ませる、という食生活が身体に良くないことは、誰しも想像できると思います。そこから現実的に可能な範囲のバランスの良い食事を整えていくことが難しいために、病気になってしまうのです。当院では、管理栄養士・糖尿病療養指導士による栄養相談を実施しております。患者様一人ひとりに適した食事療法を提案しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
2型糖尿病を発症しインスリン注射を行っていますが、インスリン注射は今後止められますか?
中止できる場合と、止められない場合があります。当院では、インスリン注射を止めることを目標に治療を実施しております。完全な中止ができなくても、1日にインスリンを打つ回数を減らせれば、生活の質が上がると考えております。膵臓の機能に合わせ、1人ひとりに応じた糖尿病治療を行いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
糖尿病を放置するとどうなりますか?
糖尿病治療を行わずに放置してしまうと、高血糖が24時間365日続くようになり、動脈硬化などの合併症が進んでいきます。最小血管合併症と呼ばれますが、細い血管の合併症が進むと、腎不全を起こし、腎臓透析が必要になったり、網膜症から視力低下・失明に至ったり、神経障害ではしびれや疼痛に始まり、時に手足を切断することになる場合もあります。また、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしてしまいます。さらに、認知症やがんなどのリスクも高まります。糖尿病は、自覚症状がほとんどないまま病気が進行するため、「サイレント・キラー」とも呼ばれています。